本学の野坂真准教授の著作『地方社会の災害復興と持続可能性――岩手県?宮城県の東日本大震災被災地からレジリエンスを再考する』(晃洋書房刊)が、「2024年日本都市学会賞(奥井記念賞)」を受賞し、10月26日(土)に同学会の第71回大会が開催された宮城県石巻市で授賞式が行われました。
日本都市学会は1953年に発足し、都市に関する学術の進歩普及を図るとともに、都市の健全な発展に寄与することを目的とし、地理学、社会学、経済学、法学、都市計画、土木工学、建築学など様々な専門分野の研究者や、自治体、コンサルタントの職員など都市やまちづくりに関わる多彩な分野の専門家が集う全国規模の学会です。
同学会による「日本都市学会賞(奥井記念賞)」は、高名な都市研究者で日本都市学会初代会長の故?奥井復太郎氏の功績を記念し、都市研究の進歩発展に顕著な貢献のあった著作を表彰するものです。
なお、野坂准教授の同著作は今年5月にも「地域社会学会奨励賞」を受賞しており、本学の図書館でも閲覧できます。
《野坂真 准教授のコメント》
このたびは、拙著『地方社会の災害復興と持続可能性:岩手県?宮城県の東日本大震災被災地からレジリエンスを再考する』に、伝統ある、そして大変栄誉ある賞を授与していただき、誠に光栄です。
本書は、東日本大震災の津波災害で大きな被害を受けた岩手県大槌町、宮城県気仙沼市にて2011年より約10年間続けてきたフィールドワークの成果を基に執筆したものです 。アンケートやインタビューなどの研究者らしい調査だけでなく、ときに再建するご自宅の地鎮祭に呼ばれたり、養殖ワカメの刈り取りを手伝ったり、震災遺族と一緒に自宅の跡地に花を手向けたりなど、何百人もの人々との継続的な共同作業も経て、書き上げられたものです。地域の皆様におかれましては、この場を借りて、多岐にわたりご協力いただきましたことへ心よりお礼を申し上げます。
現代社会では、人口減少と経済停滞が続いており、復興において被災前の人口や経済状況に戻そうと目指しても達成するのは難しいと言えます。こうした社会では、全地域が一律の復興像を目指すのではなく、それぞれの地域が自分たちに合った復興像を考えていく必要があります。そこで本書では、東日本大震災からの被災?復興過程を事例に、地域の本来持つ回復力(レジリエンス)が発揮される仕組みが、その地域においていかに成り立っており、また災害によっていかに再構築されていくかを分析しました。また、持続可能な復興をもっとも根本で支えるのは、被災当事者の心の復興であるとし心の復興と地域復興との接続にも挑戦しました。
東日本大震災から13年が経った今年は、震災から13回忌の年でもあると言えます。そうした年に、長年続けてきた研究が評価されたことに運命的なものを感じます。東日本大震災の経験を忘れず、何十年?何百年先の後世まで伝え、末永く学び続けていくことを、被災地域の皆様から、私たちがお願いされているようにも思います。能登半島地震が発生し、南海トラフ地震だけでなく日本海溝?千島海溝沿い地震の発生も切迫している昨今、地域が本来持つ回復力を活かした持続可能な復興や、それに向けた準備はさらに多くの地域で必要とされることでしょう。本書で得た知見を、各地の現場にも共有しさらに彫琢していきたいと思います。